パーキンソン病の漢方治療法(herbal therapy for Parkinson's disease)
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この二人の症状は対照的で、女性は強い安静時振戦があり典型的なパーキンソン病の症状を呈し、特に手の震えが強く、脈診が難しかった。 逆に男性は振戦は全くなく、下肢の軽度の筋固縮が見られ、手の小さな筋肉が障害されるためにシャツのボタンをかけたり、靴ひもを結ぶなどの日常の動作が緩慢になったが、すくみ足や小刻み歩行はなく、仮面様顔貌も目立たない。 この二人にそれぞれ詳細な伝統医学的診断の基づいて20〜30種類の生薬から構成される処方を作成した。 女性の方は一ヶ月後には振戦を含む症状が著明に改善し、2ヶ月後には更に症状が軽快したので、3ヶ月後に抗パーキンソン薬を半分に減量したが症状は軽快したままであった。 ところが、男性の患者は下肢の筋固縮は改善したが、手の動作の障害は改善しなかった。 この方は症状からするとパーキンソン病ではなく、パーキンソン症候群(他の神経変性疾患などが原因)である可能性があり、神経専門病院で精密検査を行っている。我々は神経細胞を用いていくつかの実験を行った結果から推察すると、伝統医学の処方生薬のいくつかの成分は黒質の神経細胞の変性を阻止すると考えられる。パーキンソン病には生薬処方が奏功することがよく知られている。 最近の臨床データでは生薬処方のパーキンソン病に対する奏功率は70%以上であるとの報告もある。この治療法はドパミンを補う治療と作用機序が異なり、ドパミン産生神経細胞の変性を阻止する新たな治療法として有望であると考えられる。しかし、漢方治療が有効であるといっても、いわゆる漢方薬のooo湯でパーキンソン病が治るということではない。ある人は漢方医のところで、oo湯とoo丸を処方されたが効果がはっきりしないと言ってきたが、理由は個々人で異なるシステム異常に対応した生薬を組み合わせたカスタムメイドの処法を作成することで初めて有効な治療になると言うことであり、既成の漢方方剤では効果は期待できない。実際、伝統医学のシステム理論と生薬の高度な知識が無ければ、正確な診断もできないし、有効な治療する生薬の処方を作成するすることもできない。