5年ほど前に、遺伝性脊髄小脳変性症の婦人が伝統医学による治療を求めて来院しました。 この病気は小脳が徐々に変性萎縮するために体のバランスが取れず歩行困難となり、最後は車いすとなってしまう難病で、親から子に優性遺伝する事が多い。米国のリンカーン大統領がこの病気で、その子孫に遺伝していることが数年前にネイチャーというイギリスの科学雑誌に発表されて有名になった病気である。 また、「1リットルの涙」というテレビや映画の主人公がこの病気であったのはよく知られている。最近では、遺伝子異常も明らかとなっているが、遺伝子治療はまだ開発されていないため治療法がない。
詳細な伝統医学的診断に基づいてこの方に18種類の植物性及び動物性生薬を処方した。1ヶ月後にはふらつきや歩行障害などが改善し、2カ月後には更に良くなった。 更に2カ月追加処方して治療を強化した。 その間に、白髪だった頭髪に黒髪が混じってきた。 特に後頭部はほとんどが黒髪に変化した。
生薬治療を一時的に中断すると数ヶ月後に再発したが再び生薬治療を開始すると2ヶ月で歩行障害ふらつきなどの症状は軽快した。伝統医学による
脊髄小脳変性症の治療に成功したことを
医学雑誌に報告した。
最近も米国から脊髄小脳変性症の患者さんが来日して60日間の治療を行った。 治療後には歩行障害やふらつきはほぼ消失して帰国した。遺伝子異常が治った訳ではないが、症状が出ていない。生薬が遺伝子の発現やその結果起こる小脳の異常を押さえ込んでいるのであろうか。 使用した生薬の成分には神経障害を修復する作用や、活性酸素を除去したり、活性酸素による遺伝子障害を抑制したり、痙攣を抑制する作用などが含まれている。しかし、
効果のメカニズムの詳細は不明である。
しかし、漢方治療が有効であるといっても、いわゆる漢方薬のooo湯が脊髄小脳変性症に有効であるということではない。
ある人は漢方医のところで、oo湯とoo丸を処方されたが効果がはっきりしないと言ってきたが、理由は個々人で異なるシステム異常に対応した生薬を組み合わせたカスタムメイドの処法を作成することで初めて有効な治療になると言うことであり、既成の漢方方剤では効果は期待できない。実際、
伝統医学のシステム理論と生薬の高度な知識が無ければ、正確な診断もできないし、有効な治療する生薬の処方を作成するすることもできない。